一門を束ねる者の度量

日本舞踊の流派のトップは家元、と呼ばれます。
振付、指導、舞踊家としての表現活動など大勢の弟子達の指針、流派の象徴です。
その一門を束ねる者、家元はそれ相当の度量が無いと難しい、と感じます。
一般的に言うなら会社社長、という位置かもしれません。
私は早くに独立して、ひとを受け入れる度量どころか、まだまだ未熟で自分自身のことで精一杯でした。
“どうしてお弟子さんが集まらないのだろう”と悩んだりしましたが、今思えばその数人のお弟子さんを相手にするのでいっぱいいっぱいであった、と思うのです。
現在、どのくらいの度量があるのかははっきりわかりませんが、お弟子さんひとりひとりに同じ熱量で気を配り、接することが苦では無くなっていることにちょっと驚いたりしています(笑)
それのみならず、自分の弟子という枠を越えて気になる人(才能)に出会うと自分にできることなら引き上げてあげたい、と思うようになりました。
私はスタートが自分1人であったので、成長と共に出会う人も変わったり、増えたりしているのだと思うと、それはそれで恵まれている、と思います。
大変なのは、先代が既に大きな人で、それを継がなければならない人です。
継ぐ時に先代と同じ度量まで成長出来ていればいいですが、なかなかそうはいきません。
先代を慕ってついてきた人が沢山いる場合は、その人たちが納得する人に自分がなっている必要があります。
この場合はもしかすると先代以上の何かがなければ難しいかも知れません。
全くそこまで大きくなくて、例えばまだ若かったり子供なのに継ぐという場合、先代からのお弟子さんたちに支えてもらったり、教えてもらったりして勉強していかなければならない、となり、それはそれでかなり厳しい道になるのではないでしょうか。
1人で始めるのは大変ではありますが、自由でもあり、自分のペースで成長していけるのは幸せなことかも知れません。
その分責任も自分にありますが。

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千翠珠煌
13歳よりアクションクラブに8年在籍。 19歳より日舞(古典・新舞踊)を始め、師範名取を経て1998年独立。 創作舞踊公演、舞踊指導等。 2017年千翠流舞を発足、国内外問わず舞踊ショー・イベントなどの活動をしている。