私の師匠は、よく言えばとても人当たりが良い、悪く言えば八方美人な人でした。
この年代の人には恐らく珍しいひとりっ子だったことも関係しているのでは、と私は思っています。
(勿論そうでない人もいますが💦)
決して争わない。元々相手の良い点を見ようとする傾向がとても強い人だったので、長所でもあるのですが、どんな理不尽を言われても決して反抗せず、その場を丸く納めてしまいます。
これは本人のことだけならまだ良いのですが、周りに他の人(お弟子さん)などがいる場合、言った者勝ちになって、周囲は我慢や迷惑を被るということになります。
私は若さもあり、理不尽が許せなくて、先生にどうして言い返さなかったかと、詰め寄ったこともありますが、「気にしなければいいの。かわいそうな人だと思って」
そして、自分が我慢すれば良い、と思っているようでした。
そして終いには「弟子は選べないのよ」と。
私もその理不尽の被害に遭う側であったので、非常に辛かった時期もありました。
何故こんな目に遭うのか、と苦しんだことも多々あります。
年月が経って私も教える立場になり、思うことは、弟子は選ぶべきである、ということです。
これは、嫌なヤツは追い出す、とかの話ではなく、自分の方針を、考え方を受け入れる人、もっとシンプルにいうと価値観が合い、相性の良い人。
どんなお稽古をしようかと考える時点から、人それぞれの好み、価値観があります。
友達などもそうですが、そういったものが合わないと長いお付き合いはできません。
これは、お教室、というサービスを提供する場も同じだと思うのです。
ですから、体験などに来ていただいた時、先方の希望をしっかり聞いた上で、相容れないものがあれば、他を探してもらうという選択もやむなしかと思います。
これは、30年教えている中で出会った方の例ですが、踊りをやりたい、といらした割に全くやる気が見られない人でした。
話しかけても殆ど答えない。
浴衣の着方を教えても3ヶ月経ってまだ1人で着られない。
踊りの振りを全く覚えない。
一緒に踊ると見ながら動くのですが、元々覚える気が無いらしく、”じゃあ踊ってみて”というと全くわからない。
2、3手でも覚えてくれないとお稽古を終われないので、とても時間がかかりました。
その割に”あゝ、そうか!”みたいな様子も無く、教えていて虚しくなってしまいました。
楽しいのだろうか?
私の言い方が悪いのか?
こんなに教えるのが辛かったことはありません。
3ヶ月たって、どう思っているのか、率直にお聞きしましたが、拙いやりとりの中にも踊りはやりたい、みたいな言い方ではありました。
浴衣を着せてくれて、覚えなくても
なんとなく踊らせてくれて、
楽しませてくれる、
みたいなところが良かったのではと思います。
ディスコ(って今は言わない?)とか、和風なら、盆踊りを楽しむとか…。
私はとうとう「申し訳ないが教えられない」とお断りしました。
30年教えてきて、たった1回ですが、自分からお断りしたのです。
こういう(お互いに)不幸が起こらないためにも、ちゃんと自分の教室のこと、
踊りを教えている、だけでなく楽しみ方、雰囲気、踊りに対する気持ち、お弟子さんに対する気持ちなどお伝えして、相手に理解してもらい、お互い気持ちよくお付き合いできる関係でありたい、と思っています。
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