発表会の意義

ここのところ、ピアノの発表会での演奏(本人らしい)をアップして「残念な演奏」としたことが、様々な反響を呼んでいるらしい。
私も偶然SNSで目にして、とても嫌な気持ちになりました。
“発表会”のその動画の演奏は別に批判されるようなものではないと思うのに、そのあとに同曲のプロの”素晴らしい演奏”を引用している。
あとから先生らしい人が本人の言葉である、と注釈していますが、それでも見本としては違うとか何とか言及していて…。
発表会はプロのコンサートではありません。
私の教室の踊りの発表会でも、初心者からベテラン、またイベントなどプロとして活動している人まで参加しています。
お稽古だけでなく、発表会という舞台に参加する意味を理解しなければなりません。
お稽古で技術さえ上達すれば良いというわけでないのは、それがひと様の前で表現するものであるからです。
技術的に進歩しても、それが人に伝わらなければ意味がありません。
人にはそれぞれ段階があり、その人の現在のベストを人前で表現しようとすることが大切だと考えています。
上手下手ではありません。
その人の精一杯の気持ちが表現できれば、相手(観客)に伝わります。
私は堂々と”今の私です!見てください!”と表現するべきだと思います。
でなければ折角観に来てくださったお客様に失礼です。

舞台に出るために、大勢のお客様の前で披露するために全力を尽くす時間。
現在の自分のベストまで頑張る時間。
大勢のお客様の前で、緊張する時間。
それに負けずに精一杯表現する時間。
少しの失敗があっても何とか最後までやりきる時間。
最後までやりきったあと、お客様に拍手をいただき、ホッとする瞬間。
お稽古しているだけでは決して体験できない様々なことが発表会でできる、とても貴重な時間なのです。
そして、どんなに拙くても、全力でお客様の前で表現できたら、それは決して残念ではありませんし、お客様も感動してくださいます。

私はいつも、観てくださる人たちを必ず意識してほしい、と伝えています。
発表会ですが、下手だろうが上手だろうが関係なくそれなりに魅せる努力をすべきだと思っています。
昔から、それこそ教室を始めたばかりの皆初心者だった頃から、私自身も含めて
“下手なりにお客様に何とか喜んでもらえる舞台にしよう”と常に思ってやってきました。

日本舞踊の舞台は序列や本人の踊りたい曲が優先になりがちですが、(勿論発表会なので、本人の得意なものや好きなものを選んだりしますが)
私の教室の舞台では、曲の順番なども工夫して少しでも楽しんでいただけるようにいつも心掛けています。
舞台(発表会)に向かう全ての行動、気持ちが1番大切な経験になるのです。

下手だから残念だったなどとお弟子さんに思わせるような価値観、指導をしてはいけない。

稽古から舞台で表現するまでの全てを含めて、先生は指導して、仕上げていく手助けをしなければならないと思います。

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千翠珠煌
13歳よりアクションクラブに8年在籍。 19歳より日舞(古典・新舞踊)を始め、師範名取を経て1998年独立。 創作舞踊公演、舞踊指導等。 2017年千翠流舞を発足、国内外問わず舞踊ショー・イベントなどの活動をしている。