恩を送って恩人を越えていく

昨日の新聞(読売新聞2023/10/7)に歌舞伎俳優中村獅童さんのインタビュー記事が載っていました。
彼は歌舞伎俳優ですが、お父様が早くに歌舞伎俳優を辞めてしまったことで後ろ盾が無く、役が回って来なかったという不遇の時代がありました。
“有名にならないと大きな役は貰えないよ”と言われて、新人の様に映画のオーディション(映画・ピンポン)に挑戦して役を勝ち取り、一躍スターになりました。

読売新聞(中村獅童インタビュー記事)

 

この映画は私も当時を覚えていますが、確かアニメの実写版で、登場人物に似せるために眉を剃った顔の迫力をよく覚えています。
それからは舞台でも大きな役が貰えるようになり、着実に歩んで来られたようですが、そうなる前のいわゆる”くすぶっていた時期”から目をかけてくれたのが今は亡き中村勘三郎氏だったそうです。
この師弟関係は有名な話で、TVでも取り上げられて拝見したことがあります。
その中でも、あまりに大きな役が来て獅童さんが引き受けるのを躊躇していた時、勘三郎さんが
「やるべきだ!やらないなら縁を切る!」
とおっしゃっていたシーンがとても印象に残っています。
歌舞伎俳優というと、それだけで恵まれていてお仕事をされていく、みたいな感じがしますが、本当に頑張って、時には苦しんで努力されているということがよくわかります。
凄いのはその努力に手を差し伸べる環境があるということです。
獅童さんはお父様が廃業されていて苦労されましたが、それでも彼の努力を見て引っ張ってくれる先輩達が沢山いることはとても幸福でした。
この記事の最後に、恩師中村勘三郎さんへの感謝と共に、こんなことを語っています。

読売新聞より

 

「中村勘三郎という存在に勝ちたい。
一生越えられないかもしれないなんて言ってちゃダメなんだよ。
『チクショウ、もう少し生きていたかった』と少しでも兄さんを嫉妬させるような役者にならないと」(以上読売新聞より)
恩を受け、返して越えていく決意。
涙が出ました。
私なんて取るに足らない人間で、年齢を重ね、足が痛いだの歳だのとため息をついていたとだったんです笑
師匠から受けた恩、力をいただいた周囲の全ての人から受けた恩を私なりに弟子や教え子に送り、師匠を越えていかなければいけない、と改めて肝に銘じたのでした。

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千翠珠煌
13歳よりアクションクラブに8年在籍。 19歳より日舞(古典・新舞踊)を始め、師範名取を経て1998年独立。 創作舞踊公演、舞踊指導等。 2017年千翠流舞を発足、国内外問わず舞踊ショー・イベントなどの活動をしている。