師匠はずっと師匠でなければいけない

人に教える覚悟

師匠はずっと師匠でなければならない。
この言葉を聞いたのは、恐らく師範の免許をいただいて間もなくだったと思います。
師匠は弟子に追い越されてはいけない。
これは、技術云々ではなく、精神的なことかなと今は理解しています。
技術は年齢と共に衰えるわけですが(成熟するともいいますが)、精神的には年齢と共に向上していかなければならない。
これはこれで結構キツいことだなと思うのではありますが、それが後を追うものに対する師匠としての姿勢、だと思うのです。
…ということはこれでいい、という終わりはない。
これを突き進む覚悟を持っていないと、いけないのですね。

師匠は教えるプロ

スポーツなどで言えばわかりやすいですが、名コーチが必ずしも名選手であるわけではありません。
勿論かつて素晴らしい選手だった方はいらっしゃいますが、弟子がその記録を抜いたり違う次元まで成長する(大成する)ということもあります。
お相撲さんの世界では”恩を返す”なんて言い方もありますね。
指導の上手い人はその人の実力を発揮させるのです。
そこに無常の喜びを感じる。
だから、更なる成長のために自分の手を離れたとしても、その成長を見守ることができるのです。

師匠と弟子は同列ではない

自分より成長できた弟子に卑屈になるようでは師匠ではありません。
昔私を熱心に指導してくれた人が、ある程度まで成長した時、私の成長のチャンスを突然邪魔し始めたことがありました。
それまで手放しで様々な援助を惜しまなかった人だっただけに、ショックでした。
最終的には、自分の立場が危うい、と思うまで私が成長したということなんだな、と自分なりに気持ちの整理をつけ、その人から離れる決意をしました。こうなるとその人は”私の師匠”ではなくなってしまいます。
私に意地悪をしてきた兄弟弟子と同列になってしまうのです。
どんなに成長して、たとえ師匠よりも好成績を納めた、実力がついた、となっても育てた喜びを感じられる人、それが師匠です。

弟子は師匠を見下さない

逆に弟子は、感謝することはあっても、見下すことはないでしょう。
もしも自分が師匠より上回った、格上になった、なんて思うような人間になったとしたら、周囲もその人のことを良くは思わないと思います。
感謝できない、礼儀を知らない高慢な人。
そういう人は遅かれ早かれ人が離れ、上手くいかなくなります。
まぁそれもそういうふうに師匠が育ててしまった、ということになったりするんでしょうか。
道は果てしなく、ですね。
自戒も込めて気を引き締めて師匠の道を歩んでいきたい、と思います😅

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千翠珠煌
13歳よりアクションクラブに8年在籍。 19歳より日舞(古典・新舞踊)を始め、師範名取を経て1998年独立。 創作舞踊公演、舞踊指導等。 2017年千翠流舞を発足、国内外問わず舞踊ショー・イベントなどの活動をしている。