ジャンルの違う動作も理解できる意味

若い頃よく様々なカンパニー(劇団に限らず)のワークショップに参加していましたが、簡単な自己紹介をすると、殆どの人はダンス経験者、あるいは現役ダンサーでした。
今でもよく覚えているのはパパ・タマフマラ主宰小池博史氏のワークショップ。

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※パパ・タラフマラは演出家小池博史氏が中心になって約30年活動したパフォーマンスカンパニー。結成当初はセリフもあったようですが、だんだんと身体表現、ブォイスパフォーマンスなど洗練された舞台で国内外を問わず活躍しました
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15人ほどの参加者の中で日本舞踊家は私のみ。
小池さんはそのことを全く特別視することなく、ワークショップは進行しました。
2人一組で波のようにお互い押したり引いたり。
2人の意識、呼吸を併せて大きく、小さく動く。
中央にブロックを積んで、照明を片方暗くして、
「暗い方が寒くて、このブロックをくぐったら暖かいところ」
1人ずつブロックをくぐって明るい所に出て行くことを繰り返す。
そこにはダンスの技術ではなく、ひたすら肌で暖かさを感じることが大切なんですね。
よく、冬など外から帰ってきて暖かい部屋に入った時の皮膚感とか気持ちとかを感じることができるか。
ホールの中をひたすらグルグル早足で廻っている中照明を消され、暗闇の中身体がなくなった、溶けたような感覚も体験しました。
小池さんはその様子をよく見ていて、終わってから「いやー、良かった!」と大喜びの様子で私に握手を求めてきて驚きました笑
2人一組の時は”日本舞踊しかできない”私と組むのを嫌がった人もいましたが笑、表現に必要なのは技術ではなく感覚、意識であると実感することができました。
全身の感覚を鍛えるのは良いことですが、それはダンスでも日本舞踊でも手段としては関係ないということです。
身体全体を意識して感覚が伝わっているかどうかは、”そういうこと”をしている人ならわかるんですね。
それがジャンルが違っても表現が理解できる理由なのです。
以前オペラ歌手とモダンダンサーが1対1でコラボパフォーマンスをしたのを拝見しましたが、どちらも表現力が拮抗していてパフォーマンスが2倍どころか3,4倍になっていて圧巻でした。
私は日本舞踊をしているので、その辺りを感想を述べる時隙のない身体表現という意味で
“所作が素晴らしい”
という言い方をしてしまいますが、上辺の形だけのことではないんですよね。
この辺りのことが理解し合える、同等に語り合える、表現し合える相手と出会えることが、最高の幸せなのです。

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千翠珠煌
13歳よりアクションクラブに8年在籍。 19歳より日舞(古典・新舞踊)を始め、師範名取を経て1998年独立。 創作舞踊公演、舞踊指導等。 2017年千翠流舞を発足、国内外問わず舞踊ショー・イベントなどの活動をしている。